2017年10月18日水曜日

冷蔵庫と氷


まだ暑い時期。入浴後に娘さんが入れてくれた麦茶を、氷の音をカラカラとさせながらおいしそうに召し上がる。

「今度の冷蔵庫は、氷が自動でできるのよ」

ニコニコと、というよりも少し興奮気味でおっしゃる。毎回、かならず。
 
毎回かならず繰り返される。きっとそこには大事な気持ちが含まれているのだろう。だからこちらからは踏み込まず、その時間を一緒に居させてもらう。


その日、がやってきた。
「今度の冷蔵庫は、氷が自動でできるのよ」
汗を拭きながら、麦茶を飲まれる。
へぇ、そうですか。
「昔は、氷は氷屋さんに買いに行ってたでしょ。こんなに大きいやつよ。」
身体の幅くらいに手を広げて、その手の中を見つめていらっしゃる。
 
「この氷で、冷蔵庫を冷やすの。」
冷蔵庫用の、ですか?
「そう。わたしたちの時代は、木の冷蔵庫だから。」
木の冷蔵庫!
「このくらいの大きさのね。氷を入れておくと、冷蔵庫になるのよ。」
 

そこから、「三種の神器」の話へ。テレビがおうちにやって来た日。家族で温泉旅行に出かけて、そこで初めてカラーテレビを見たときのこと。洗濯機は、ほかのおうちで使っているのを見させてもらって、それから買うことにしたこと。

あぁ、この方はこんな景色を生きて、今目の前で麦茶の中の氷を感じているのかぁ。
浴後だからほっぺもピンク色で、表情までちがって見えてくる。



入浴後のタイムトラベル。
「氷が自動で」はその後も続いたけど、木の冷蔵庫の話を聞けたのはこの時限り。

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